「日本最高の左心耳治療チーム」

「入院2泊3日、手術時間30分で脳梗塞の経カテーテル的予防治療」

「5mmの傷で脳梗塞予防」

「新規施設への教育プログラムを提供」

心原性脳梗塞とは

脳が血流不足となり身体に麻痺などの症状を引き起こす脳梗塞、その原因の3分の1は脳の血管自体の病気ではなく、心臓が原因と言われています。これは不整脈の1つであり、高齢化で増加している「心房細動」の患者さんにおいて、心房内の血流が低下することで血栓が形成され、その血栓が血流に乗り脳血管に塞栓症をおこすものです。

心房細動の患者さんの心臓の中で血栓を形成しやすい場所があります。それが「左心耳」と呼ばれる部位です。左心耳は、左心房の一部の袋状になっている部分で、心房細動が原因でできる血栓の約9割がこの左心耳の中でできているとされています。

心臓の模式図

心房が痙攣している

左心房の横にある左心耳

経食道心エコー検査で見た左心耳と左心耳内血栓(赤矢印)

心原性脳梗塞の予防

心房細動による塞栓症の予防には、心房細動そのものに対する治療に加えて、血栓をできにくくするための薬物療法と非薬物療法があります。
(なお血栓症の予防治療には心房細動自体を治療する効果はありません。)

1.薬物療法

現在、心房細動による塞栓症を防ぐための標準的な予防法は、薬物療法です。
血液を固まりにくくする薬(抗凝固薬等)を服用します。代表的な薬としてワルファリンやその他の新しいタイプの薬もあります。

2.非薬物療法

左心耳自体を切除したり、縫い閉じたりする方法があります。
このなかに、外科的な手術と、低い侵襲度で行う血管の中を通って左心耳を内側から蓋をする方法があります。後者が経皮的左心耳閉鎖術と呼ばれます。

経皮的左心耳閉鎖術  (Percutaneous Left Atrium Appendage (LAA) closure)

2000年代前半から各社が左心耳閉鎖デバイスを開発し、欧米各国で実際の患者さんに対して治療がされてきました。全世界でこの治療を受けた人は20万人を超えてきており、欧米を始め日本の治療ガイドラインにも収載されている治療です。
この左心耳閉鎖術は、心房、心耳の形態評価、機能評価が重要ですが、岩手医大ではカテーテル治療が日本に入ってくる前からエコーやCTなどを用いて、多角的な画像評価をおこなってきました。
また2017年に実施された本邦への導入のための臨床試験に当院は参加し、試験全体のトレーニングや患者スクリーニングおよび手技実施に際して大きな役割を果たしています。
2022年現在、国内で使用可能なデバイスはボストンサイエンティフィック社のウォッチマンデバイスのみです。

Matsumoto Y, et al. Characteristics of Anatomy and Function of the Left Atrial Appendage and Their Relationships in Patients with Cardioembolic Stroke: A 3-Dimensional Transesophageal Echocardiography Study. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2017 Mar;26(3):470-479.
Hozawa M, et al. 3D-computed tomography to compare the dimensions of the left atrial appendage in patients with normal sinus rhythm and those with paroxysmal atrial fibrillation. Heart Vessels. 2018 Jul;33(7):777-785.

ウォッチマンデバイスによる治療

デバイスによる治療は、足の付け根の静脈から心臓まで5mm弱のチューブ(カテーテル)を挿入し行います。右心房から心房中隔を経て、左心房の脇にある左心耳に道具を内側から嵌め込んできます。
現在使用されている道具は20−35mmの大きさで5サイズありますが、心耳の大きさや形によって道具が合わない方が5%程度います。
道具のサイズによらず同じカテーテルを使用しておりその太さは5mm弱です。
今までの臨床試験では抗凝固薬と同等の脳卒中の予防効果、大出血事象を3分の1程度に低減させることができるとされています。また心血管死亡を41%、総死亡を27%減少させるという報告もされています。

Reddy VY, et al. JACC 2017; 70(24): 2964-2975
Kazutaka Aonuma, et al. Circ J 2018; 82: 2946-2953.

経皮的左心耳閉鎖術の模式図とウォッチマンデバイス(画像:ボストンサイエンティフィック提供)

経皮的左心耳閉鎖術の適応

臨床試験を経て2019年に本邦に導入された左心耳閉鎖術ですが、現在保険診療の対象となる患者さんは今までに大出血の既往のある患者さん、もしくはリスクスコアで大出血リスクが高い患者さんに限られています。
対象になるかは、下記の表をご参照ください。
左心耳の形態学的評価も行い、閉鎖治療の効果と危険性のバランスを考慮した上で、患者さんとよく相談し最終的に治療の要否を判断します。

適応チャート

クリックすると拡大してご覧いただけます

岩手医大の経皮的左心耳閉鎖術

広い北東北をカバーするため、当院では、紹介医および患者さんの負担を軽減する取り組みをおこなっています。

1.術前検査

「必要最低限の術前検査で治療へ」

【一般的な場合】

採血、胸部レントゲン、心電図(直近および発作性の場合心房細動が補足されているもの)、経胸壁心エコー、心電図同期造影CT
(心臓の造影CTが撮像可能な場合、術前の経食道新エコー検査は行いません)

  • 適応も間違いなく、患者さんも受容されている場合

近隣の病院で術前スクリーニングし、直接手術目的の入院を組ませていただくこともあります。

  • 治療適応についての相談、治療について担当医から直接話が聞きたい場合

外来を受診していただき、適応判断の上で、追加の術前検査などについてご相談します。

2.治療入院

基本の入院は2泊3日です。
安全確実に治療を行うため、全身麻酔下にハイブリッド手術室でレントゲン透視と経食道心エコーを使用しながら治療を行います。
傷は太ももの付け根に5mmのみと非常に小さく、病室に戻って3時間後には歩行、食事も可能です。

当院での手技データ (2019年9月~2022年8月)

手技時間40分、造影剤使用量平均17ml(造影剤を使用しないケースもあります。)
周術期合併症:輸血を要する出血0%、周術期脳卒中0%、心嚢液貯留0%、緊急手術0%、死亡0%
術後平均在院日数 1.2日

入院治療の流れの一例

3.退院後

もともと通院されている病院・クリニックから処方を継続していただき、状況を確認しながら、抗血栓薬を減量していきます。
検査の内容は個別に相談します。

デバイス留置後の経過

4.費用

入院費、手術代、道具代などを含め、総額210万円程度です。
通常の公的保険でカバーされますので、保険に応じて1割から3割の負担になります。
また高額医療費の減免対象になりますので、(年齢や所得により異なりますが)70歳以上の一般の方の場合57600円が上限になります。
医療保険の入院や手術特約の対象となるものもありますので保険会社に御確認ください。

患者さんの紹介について

出血リスクの高い非弁膜症性心房細動患者さんについて、治療の適応および可否について当院のブレイン・ハートチームで検討いたします。
詳細については個別にお問合せください。
候補患者様がいらっしゃいましたらお気軽にご相談ください。

循環器内科医局

019-613-7111(内線6415) 9:00~17:00

MitraClip担当医師
中島 祥文

国内実績

本邦では2017年から国内臨床試験が行われ、国内10施設が参加し54名の患者さんにデバイスの植え込みが行われました。
海外でこれまで培われてきた多くの知見を生かし取り入れることで治療手技成功率は100%、治療関連の合併症はありませんでした。治療後のフォローアップでは身体障害に影響を及ぼす心原性脳塞栓症などの発生はなく有効性と安全性が認められています。この結果を受け、2019年2月に薬事承認を取得し、2019年9月からは保険診療として左心耳閉鎖治療が開始されました。

当院実績

当院では心房細動を原因とする心原性脳塞栓症発症の予防は非常に重要なテーマと考え、左心耳閉鎖治療に関し準備を行ってきました。
この治療のターゲットとなる左心耳は未知の部分が多く、解剖学や機能、容積や形態学的特徴に関する研究を国内でも先進的に進め、さまざまな情報を国内外へ発信してきました。
国内臨床試験にも参加しています。
米国で左心耳閉鎖治療を学び、臨床試験、保険診療開始後を通じ国内で唯一術者指導医(プロクター)の資格を持つ中島医師が在籍し、2019年9月の保険診療開始に合わせ、いち早くの治療開始を可能にしております。
また予防的治療である本治療において、より高い安全性と確実性を高め患者さんの負担を軽減する目的で、CTを用いた独自の術前左心耳解析ソフトウェアを岩手県立大学と共同開発し実臨床に役立てています。

当院実績

治療実績

当院では心房細動を原因とする心原性脳塞栓症発症の予防は非常に重要なテーマと考え、左心耳閉鎖治療に関し準備を行ってきました。当院の中島医師は、米国で左心耳閉鎖治療を学び、臨床試験、保険診療開始後を通じ国内で唯一術者指導医(プロクター)の資格を有しております。このことから、当院では2019年9月の保険診療開始に合わせ、国内でも早い段階で本治療を開始することができました。

研究実績

この治療のターゲットとなる左心耳は未知の部分が多く、解剖学や機能、容積や形態学的特徴に関する研究を国内でも先進的に進め、さまざまな情報を国内外へ発信してきました。また、国内臨床試験にも参加しています。
また予防的治療である本治療において、より高い安全性と確実性を高め患者さんの負担を軽減する目的で、CTを用いた独自の術前左心耳解析ソフトウェアを岩手県立大学と共同開発し実臨床に役立てています。

患者さんの紹介について

出血リスクの高い非弁膜症性心房細動患者さんについて、治療の適応および可否について当院のブレイン・ハートチームで検討いたします。
詳細については個別にお問合せください。
候補患者様がいらっしゃいましたらお気軽にご相談ください。

循環器内科医局
019-613-7111(内線6415) 9:00~17:00

経皮的左心耳閉鎖術(LAAC)担当医師
中島 祥文

治療の流れ

・治療スケジュール例

入院治療当日術後検査退院

3泊4日で「1回限り」の脳卒中予防が可能です。